汚れを落とすための工夫
クルマにやさしく、しかししっかりと汚れを落とす。
これを実現するには、さまざまな問題を解決しなければならない。
「ただ汚れ落ちをよくするだけなら、ひたすら汚れを分解する方向性を追求するだけです。でも、それだけでは塗装に悪影響が出てしまう。 それでは意味がないんです」
洗浄を考えるとき、アプローチは大きく分けて二つ、考えられる。
化学的に汚れを除去してしまうこと。
物理的に汚れを排除してしまうこと。
この二つのバランスが重要なのだ。
「化学的に汚れを除去するために界面活性剤があります。ひとことに界面活性剤といっても膨大な種類があり、ただ強いものを選んでは、塗装に悪影響がでることもあります。だからカーシャンプーでは、塗装を害しない界面活性剤の選択と、界面活性剤と汚れを媒介させる物質を組み合わせ、バランスを探ることで、 汚れを除去する効果を上げています」
もうひとつの肝が、泡だ。
「泡は、クルマに付着する汚れをできるだけやさしく排除するために、絶対に必要なものなんです。汚れそのものを泡で包んでやることでやわらかくすることができますし、さらには浮き上がらせることもできる。ボディとの干渉と摩擦を極力減らしてやることで、キズつきを抑えながら流してしまうことができます」
化学の世界は常に進化している。だから、研究の種がつきることはない。
S21の真髄
では、その中でS21とは、どんな存在なのだろうか。
「S21では、コーティングやワックスを施工する上での理想的な環境を作ることを目的としました。そのために、化学的に汚れを除去するアプローチを採用しています」
一般の洗剤では、界面活性剤の働きで汚れを包み込んで浮かし、取り除いている。
これはカーシャンプーでも同じ原理だが、シャンプーのあとに塗装表面をコーティング施工する上では、それだけでは理想的な環境にはならない。コーティング剤やワックスを施工する上で障害となるのは、主に油性の汚れである。これをきっちり取り除いてやることで、塗装表面に施工に適した環境を作り出すことができる。
「油性の汚れはついた直後であれば簡単に除去することができるのですが、付着してから時間を経るごとに変化し、こびりついて除去しにくい状態になっていきます。そこで、そのこびりつきに対応する物質が必要でした」
それが、今回配合されているオレンジオイルであるという。
柑橘系の果物の皮に含まれるこの物質は、油性の汚れに対し強い効果を持っている。このため、台所用洗剤などにも使われている物質だが、これと界面活性剤を組み合わせ、クルマの塗装表面に対して最適化することで、より汚れに対して積極的にアプローチでき、油性の汚れを除去する力が向上する仕組みだ。
「理想の下地は、油分が残っていない状況を作り出すことです。界面活性剤とオレンジオイルを、汚れに強い洗浄性を発揮させつつ、塗装には優しい状態のバランスを探ることで、カーシャンプーとして驚異的な脱脂力を得ることができました」
これだけではシャンプーの役割は終わらない。汚れをボディ表面から綺麗に洗い流すことができて初めてシャンプーの役割を果たしたと言える。
「洗い流すために、泡と泡切れは重要な要素です。泡立ちを助け、ボディに優しくシャンプーをしてもらうために、スポンジはキメが細かく、柔らかいものを採用しています。液剤そのものは泡切れまでを考慮して設計されているので、洗い流しもスムーズに使えますよ」
ここまでシャンプーにこだわる理由は、なんなのだろうか。
「確かに、ワックスやコーティング剤のほうが、華やかですよね(笑)でも、どんなに優れたコーティング剤でも、結局は下地がちゃんとしていなければ性能は発揮できないんです。うちの会社は、何かの表面に薄い膜をつくるのが得意なんですけど、その陰で、膜を除去したり、下地を整えたりする技術も追い続けてきたんです。両方出来て、はじめてワンセットとして成立するものなんですよ」
確かに、カーシャンプーは主役ではないのかもしれない。
しかし、クルマを美しくみせるという目標の一端を担う者としての矜持を持って作られたのが、S21なのだ。